あいつの背中が暖かく感じるようになったのは…いつからだっけかな。





「さむっ!あんた見てるとこっちまで寒くなるっつーの…」

雪の降る戦場に、こいつと俺の2人きり。

真っ白い雪の中にひときわ目立つ血の色。

俺たちのじゃない。

周りで倒れてる兵士のだ。



「ったく…それだけ悪態つけんなら、もちっと動けよなぁ…それとも、俺様が助けに来るのを待ってたのか?」

嬉々として聞いてくるヤツの声が、むかつく。

「バカんねい。それよりも、あんたも周りを見た方がいいんじゃないの?」

「へっ!お互い様だろ!!」


振り下ろされた刀が、兵士の腹を切り裂く。

せっかく積もった白い雪を、再び紅く染めた。

「ぼさっとしてんなよ!凌統!!」

「ふんっ!それこそお互い様だっつの!」


俺たちは、敵兵に囲まれている状況だった。

こんな状況でこんな話が出来る。

背中合わせになってる相手がヤツだから。

どんなにやばい状況にやっても、こいつが一緒なら、不本意だが乗り越えられる気になる。

現に、今までぐるっと囲んでいた敵兵は半分以下になっていた。

俺たちは無傷。

多分、どちらかが欠けていたらやられていただろう。

「気合入れなおしていくぜぇっ!!」




「たぁぁぁ〜…さすがに疲れたぜぇ…」

たくさんの敵兵の死体の真ん中に座り込む俺たち。

「早く…陸遜さんたちに合流しないとな…」

「なぁ…もう少し休んでからにしようぜ?」

さっきの威勢の良さとは逆に、情けない悲鳴が上げられた。

子分たちには見せないこの力のない姿が、なんだか不思議に心地よかった。

「そ、だね…」



「なぁ…あんた、寒くないのか?」

沈黙に耐え切れず、話をきりだす。

なんでかな…いつもは出てくる憎まれ口が出てこない。

「んぁ?そーいやお前さっき寒いって言ってたよな?」

背中から聞こえる声が心地よい。

「さむ、くねぇなぁ…不思議と。背中があったけぇんだ」

「おめぇの体温が高いからだな!」なんて、笑って言ってくる。

顔が熱くなって向けていた顔をそらした。


再び流れる沈黙。

後ろからかすかに寝息が聞こえる。

「…たく、緊張感のないヤツ…」


雪は降り続いてて、周りの真っ赤だった雪がまた白くなっている。

そういえば…寒くない。

背中が、すごく温かかった。

甘寧の体温。


仇として憎んでいたやつ、単純でイノシシで…バカなやつ。

すっごく…あったかいんだなぁ。


もう少し…あと、ちょっとだけ。

恨みも、憎しみも、なにもかも忘れて…

この暖かさと愛しさに溺れてやるとするか。






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久しぶりに甘凌SSです。
最後の凌統のセリフはもっと素直にしたかったけど、
そこは凌統って感じで、終わらせてみました。
甘寧は「凌統大好き!!」って全面に出してて欲しいですv
凌統はそれを「はいはい…」て受け流してるといいと思う。
で、後々寝屋とかで真っ赤になってるとさらにいい!
そんな思いで書きましたw
でも、やはりしまりがないなぁ…。